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第一回 東京ドロウイング株式会社 代表取締役 寺岡一郎(2/2P)

お客様は神様ではなく「王様」だった!?

松下 ライフプランを思い描くことは、仕事に向き合う社員にとっては貴重なアドバイスですね。そのほか、社内に浸透しているビジネス上の共通意識はありますか?

私は1.5代目社長なんです(笑)
私は1.5代目社長なんです(笑)

寺岡 そうですね。部下の仕事は上司の補佐がメイン。ですから、ナンバー2には備えておくべき必須条件があります。それは、上司に気持ちよく仕事をしてもらう、ということ。自分の中で正しいことがわかっていても、社長や上司から「こうやってくれ」と言われたら、「はい、わかりました」とだけ言います。で、違うことをやる(笑)。

松下 それは大丈夫なんですか?(笑)

寺岡 当社では、これを「やり過ごし」と言っているのですが、要するに「自分の責任で、真剣勝負でやりなさい」ってことなんです。逆に言えば、「上司が言ったからその通りやりました」で、うまくいかないことを正当化するのはもったいないこと。「仕事は成長のチャンス」です。言われたことだけやって、上司のせいにして逃げる。これでは成長がないでしょう。

松下 ちなみに、寺岡さんご自身も、お父様である先代社長に対して「やり過ごし」てきたわけですか?

寺岡 もちろんです(笑)。私は前社長に対して最終目標をつかんだら「はい、わかりました」しか言いませんでした。最後は「お前には参ったな」みたいな感じで笑われましたよ。「2代目は苦労するでしょ?」とよく言われるのですが、「やり過ごし」で好き勝手させていただいたので、私自身は1.5代目社長ぐらいに思っています(笑)。

さらにいうと、この「やり過ごし」は、お客様に対しても当てはまります。当社は「お客様第一」を掲げていますが、お客様は神様じゃなくて「王様」なんです。王様は人間だから間違うこともある。でも、「お客様、あなた間違っていますよ」とは決して言いません。「はい、そうですね」と答えて、別の答えを準備しておく。それをご提案して最後に理解いただければ、お客様が感謝してくださる。これは、仕事だけでなくどんな場合でも大切なことですね。

もうひとつ。人間は一人では生きていけない存在です。自分だけの利益を追求するやり方では成功できません。成功者は必ず、「Win-Win」の発想を持っています。社内でもお客様でも家族でも、みんながそういう気持ちを持っていれば、必ず成長していけます。

松下 なるほど。Win-Winの発想のひとつだと思うのですが、寺岡さんは「社会貢献」の大切さを説かれていますよね。実際に2008年2月、半導体開発受注のNPO法人R&R(Reach&Richness)を設立されました。この狙いは?

エグゼクティブが全うすべきこととは?

寺岡 私がいずれ、東京ドロウイングを去るときまでにできる社会貢献は何かを考えると、ビジネスパートナー、後継者、ずばり社長を創ることだと思ったんです。具体的には、まず10月1日付で半導体関連の新会社を、当社バックアップのもとスタートしました。今後は、ギブ&ギブの発想でこのNPO法人をWin-Winの場に成長させていきたいと考えています。

これは国内だけの話ではなく、ゆくゆくはアジアの架け橋になりたいという目標もあります。もう、日本だけにこだわる時代ではありません。3年後、5年後を見越して、日本企業に勤めたい人に対して技術支援・育成を行っています。

「エグゼクティブに必要な能力、資質とは?」
「エグゼクティブに必要な能力、資質とは?」

松下 そういうグローバルな活動も視野に入れた場合、エグゼクティブの活躍が、今後いっそう期待されるかと思います。そもそも寺岡さんは、どういう能力を備えた人をエグゼクティブだと考えていますか?

寺岡 真っ先に出てくるのは「利益責任」を持つ人ですね。当社の場合は、部長以上の役職にいる上層部がエグゼクティブに当たります。利益責任を全うするために何が必要か。その答えを自分自身で導き出すことが重要です。

エグゼクティブは聞き上手であり、肯定的に受け止めることが大切ですね。「俺の握った寿司が食えないのか!」ではなく、「あなたのお好みは何ですか?」をうまく聞き出すことができれば、目の前に答えが出てくる。簡単なことに思えるけど、これが実に難しい。

そもそも、人間って不完全なものなんですよ。お互い不完全だとわかった上で、自分の部下をどう引っ張っていけるかどうか。さらに言えば、どれだけ「やり過ごし」を甘んじて受け入れられるか。これもエグゼクティブに必要な要件のひとつでしょう。

松下 ちなみに、エグゼクティブの実績評価はどういう軸で行っているのでしょうか? 営業職なら営業実績がベースになるので比較的わかりやすいと思いますが、技術部門や総務、人事、経理などは難しいと思うのですが。

寺岡 それは難問ですね。技術部門や管理部門は、あらかじめその業種にあわせて基準となる数値を定めておくしかないでしょう。人が人を評価するなんて完璧にできるわけはありません。不満や誤差が出てくるのはある程度仕方がありません。そうなったときに立ち戻ってくるのは、経営理念しかないかな、と。

当社の経営理念を一言で表すと「共育」です。"共に育む"ことの重要性は、Win-Winの発想と近いものがありますね。経営理念は会社にはなくてはならないもの。エグゼクティブはそれを深く理解し、部下に浸透させることで共に成長することを忘れてはいけません。

松下 なるほど。これからのエグゼクティブに期待されることは、「利益責任」や「共育」への意識。人任せでも独りよがりでもなく「会社を一緒に創って行く」という強い気持ちを持って経営に臨む姿勢なのですね。本日は貴重なお話しをありがとうございました。