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第二回 アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 松井 香(2/2P)

きっと、仕事か家事のどちらかが趣味なんですよ(笑)。どちらも必要なんです。

「キャスターからの転身、というのが面白いですね。」
「キャスターからの転身、というのが面白いですね。」

松下 現在手がけられているお仕事も興味深いのですが、松井さんはその経歴がさらに面白い。社会人としての出発は、報道部キャスターだったんですよね。そこからどうやって、いまの職種に行き着いたのでしょうか?

松井 それを話すとなると、子どものころにさかのぼりますが......(苦笑)。ざっとお話しすると、私の実家は、私以外ほとんど医師(医療関係)で父が病院経営をしていたので子供の頃から私も会計伝票をさわり、目の前で交渉をしてビジネスを成り立たせていく過程を実感していて、「周りが就職活動しているから自分も」という意識は生まれませんでした。

しかも一方、親からは「資格や免許を取れ」と言われ続けまして、そうなると今度はそれに反発して、資格や免許に頼ることなく、自分の力をつけるんだという意識が強くなりました。その結果、自分のコミュニケーション能力(交渉力)を生かす道として選んだ道が報道でありテレビのキャスターだったというわけです。

ただ、思い返せば、見通しの甘さもありましたね。1日18時間くらい働きっぱなしで、結局、雇われの身であることには変わりなかったんです。ローカル局から社会に与えるインパクトの小ささに、一生をかけられる仕事なのか? という葛藤もありました。

大変刺激的でエキサイティングな環境でしたが、結婚・上京をきっかけに、やっぱり資格を取ろうと思って、フリーランスで司会やライティングの仕事をしつつ、出産・子育てをしつつ、会計の勉強をしました。その時期は混沌としているのですが、ベンチャー企業のお手伝いをしたり、政治家の方からいろんな話をいただいて、最前線で勉強させていただき、今につながっています。

松下 子育てをしながら様々なお仕事をされていた、と。お会いしてこの春高校3年生と1年生のお子さんがいると聞いて本当に驚きました。仕事と家庭の両立は大変だったのでは?

「仕事も家事も両方ないと困るんです(笑)」
「仕事も家事も両方ないと困るんです(笑)」

松井 きっと、私にとって、仕事か家事のどちらかが趣味なんですよ(笑)。大変とかいう意識はなくてどちらも必要なんです。両方ないと困る。家庭がなかったら、こんなに仕事できないと思います。もちろん、パートナーの協力があってのことですし、子どもたちが健康でいてくれるという背景はありますよ。私がハードに仕事を始めてからの方が子ども達が病気しなくなりましたし、絶妙なバランスがあるんでしょうね。

あと、私が外に出て仕事をすることで家族にとって良い点もあります。母親って家にいると、子どもについつい「○○しなさい」なんて言っちゃいますよね。特に、私はこんな感じでエネルギッシュなので、この勢いを子どもにぶつけるのは、正直かわいそうなんです(苦笑)。このエネルギーは外で使うほうが有益ですし、親からの間接的な刺激によって、「自分で考えよう」「自分が正しいと思うことをやろう」という意識をもってくれるなら、そっちのほうが絶対にいいと思うんです。

苦労して創った「種」を超える本物の「種」はありません。

「女性が第一線で活躍する秘訣は?」
「女性が第一線で活躍する秘訣は?」

松下 それはまさに、ワーク・ライフ・バランスですね。仕事における責任を果たしながら、家族との良好な関係性も築いている。松井さんのように、女性が第一線で活躍する秘訣は何でしょう?

松井 そういう質問をよくされるのですが......答えは「ない」ですね(笑)。自分でやりたい人生の方向があって模索するうちに目の前に道があったから、そこを通って今ここにいるという感じです。

松下 途中で道が分かれていたら、何を基準にいずれかを選んできたのですか? それは「第六感」みたいなものなのか、それとも「運」なのか。

松井 よく「運がいいですよね」なんていわれるのですが、運はいいとか悪いじゃなくて"創るもの"だと思っています。私自身は「普段から集めている情報を自分の中のデータベースに貯めているのが強い運を創っている」と言われたことがありますが、「努力を怠らなかった」という自負もあります。いわゆる「運がいい」人というのは、努力することが苦もなくできる人だと思います。

松下 なるほど。ビジネスにおいて、松井さんは相手のどこを見て「この人と一緒なら仕事ができそうだな」と判断されますか?

松井 なかなか難しいのですが...一緒に仕事をやりたいと思うのは、自分にないものを持っている人ですね。もちろん、コアな部分における価値観が合っていることが前提ですが。反対に、一緒に仕事ができないタイプは、ウソをつく人、理解力の乏しい人、人を裏切る人、あとは逃げる人。

結局、どんな仕事をしていても、きちんとしたコミュニケーションをとれるかどうか、ですね。それも、表面上のコミュニケーションではなく、相手の意見をきちんと理解して、きちんと腹を割れるところまで通じ合えることが大切だと思います。信頼できる人たちといい仕事を積み上げていきたいですね。

松下 ちなみに、昨今の世界的不況の影響で、日本においても雇用問題が大きく取りざたされています。こういう時代だからこそ、エグゼクティブは積極的に自分をより生かせる職場を探して動くべきなのか、それとも今はじっとするべきなのか。様々な企業を見てきた松井さんは、これについてはどう思われますか?

「状況を理解した上で動きを決める。中途半端は論外。」
「状況を理解した上で動きを決める。中途半端は論外。」

松井 それは、両極端にあると思います。ひとつは、「だからこそ、いまリスクをとるべきだ」という考え方。みんなが動かないときに動いて、「苦労して創った種」を超える本物の「種」はないと思います。もうひとつは、こういう不透明な時代だからこそ、しっかり準備をし、状況を理解した上で身を沈めて次のチャンスが来るのを待つか。中途半端は論外ですね。

いずれにしても、最終的には自分の身は自分で守っていくしかないと思うんです。ビジネスの世界に入ったなら、そこを生き残っていける能力を自分自身で創っていくこと。この意識が重要ですね。誰かが何とかしてくれる...なんてことはありませんから。私もまだまだベンチャーマインドで自分にチャレンジし続けたいと思います。

松下 動くにせよ、動かないにせよ、きちんとリスクを把握した上で行動することが大切である、と。そして、頼れるのはやはり自分自身の能力。それを担保するのは、好きなことを続ける努力というわけですね。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。